オンチップウェビナー第一弾 Q&A:「ゲルマイクロドロップ(GMD)によるタンパク質高分泌生産株の高速スクリーニング技術」 町田雅之先生(金沢工業大学) - セルソーター セルアナライザー フローサイトメトリー | オンチップ・バイオテクノロジーズ

オンチップウェビナー第一弾 Q&A:「ゲルマイクロドロップ(GMD)によるタンパク質高分泌生産株の高速スクリーニング技術」 町田雅之先生(金沢工業大学)

2020年6月25日に開催されたシスメックス株式会社・オンチップ・バイオテクノロジーズ社合同ウェビナー第一弾のQ&Aです。
「ゲルマイクロドロップ(GMD)によるタンパク質高分泌生産株の高速スクリーニング技術」 町田雅之先生(金沢工業大学)
ご質問等がございましたらinfo@on-chip.co.jpにご連絡くださいますようお願い致します。

以下、ウェビナーの際に頂いたご質問とその回答になります。

Q: 作製可能なドロップレットサイズはどの程度なのでしょうか?

A(オンチップ): 標準的なサイズとして直径30~40μmのドロップレットが形成可能です。また、サンプル圧を調整することによりドロップレット径を大きくまたは小さくすることも可能です(サンプルの粘性等に依存します)。

Q: GMDの硬さはどれくらいですか?

A(町田・オンチップ): 今回の実験ではアガロースの濃度で0.5~2%程度のGMDを作成しています。ゼラチンなどアガロース以外のゲルの場合でも、ゲル濃度を変化させることで硬さを調整することが可能です。

Q: GMDはSSCやFSCで分離可能ですか?

A(オンチップ): 包埋されるサンプルの大きさにもよりますが、動物細胞など比較的大きい細胞であれば分離可能です。大腸菌など小さな微生物になると1細胞が入ったGMDをFSC・SSCで区別することは難しくなります。

Q: GMDを溶かすとは、材料が何であっても可能な操作ですか?

A(オンチップ・町田): GMDの溶解はゲルの素材に依存します。例えばゼラチンの場合はトリプシンなどのプロテアーゼにより、またアルギン酸の場合はEDTAやクエン酸などにより可能です。アガロースGMDの場合はアガラーゼ(アガロース分解酵素)を用いた例が報告されています。

Q: GMDは培地交換ができるのなら、微生物が産生した分泌物や酵素もGMDに残らず外液に拡散しませんか?

A(オンチップ・町田): 分子のサイズにも依存しますが、基本的にGMD内の物質は外液へと拡散します。そのため、産生された物質の検出には、抗体などを用いてその物質をGMD内に留めるための工夫が必要になります。

Q: どうやって、マイクロコロニーの一部だけ活かせることができるのですか?

A(町田): 細胞外の化合物を細胞内の酵素の基質とするために、細胞膜の透過性を上げる必要があります。報告では、この処理条件を至適化することで、マイクロコロニーの約90%の細胞の膜を透過性にしつつ生存する細胞が残った状態にできるとのことです。

Q: アガロースをゲル化させる時間はどの程度でしょうか?

A(町田): ドロップレット形成後on iceにて15~30分程度です。

Q: アガロースのGMDを溶かすのは、熱処理でしょうか?

A(オンチップ・町田):低融点アガロースの融解は60℃程度ですが、溶解した状態で40℃程度に冷却して細胞を添加することでGMDを作製しています。酵母などでは、固化したGMDをそのまま培養することで細胞を増殖・回収することができますが、必要に応じてアガラーゼで溶解して回収する方法が報告されています。

Q: ジェネレーターで実際シングル封入可能な酵母の数はどの程度でしょうか。

A(町田): 作製可能なGMD数は約10^7~10^8個程度になります。シングルセルで包埋するために酵母懸濁液を希釈していますので、そのうち約10%のGMDに酵母1細胞が入っています。

Q: 酵母はdropの状態(オイル中)ではなく、GMDの状態(水溶液中)で培養していますか?

A(町田): はい、GMD形成後オイルを除去し、生育などに適した培地で培養しています。

Q: GMDの洗浄はどのように行っていますか?

A(町田): 培地やバッファにGMDを希釈し、遠心することで洗浄しています。GMD濃度が十分に高いときには、遠心で簡便に濃縮することができます。

Q: ソート後プレートにまく際もGMDのままですか?それともGMDを溶かしますか?

A(町田): 酵母の場合ですが、ソート後はそのまま寒天培地に播くことでコロニーを形成させています。

Q: 酵母の様によく増えるものはいいですが、難培養の土壌微生物などはGMD内でどのように増やすのですか?

A(オンチップ): 土壌微生物の場合、例えばLB培地を10倍以上に希釈したものをGMDの培地として1ヶ月以上培養するなどの方法をとられるようです。

Q: GMDのソートは一般的なセルソーターで可能ですか?

A(町田・オンチップ): FACS Ariaを用いてGMDのソートを行っていた場合は直径50 μm程度のものは可能でした。GMDは大きいほどS/N比が良くなると考えられますが、FACSの流路が詰まりやすくなるなどの問題があります。一方、On-chip Sortでは直径100μm程度のGMDまでソートすることが出来、この問題も回避できる上、ソートされたGMDの観察が容易などのメリットもあります。

Q: フリーの細胞を除く(洗う)方法はありますか?

A(オンチップ・町田): 細胞は通るがGMDは通らないフィルター(セルストレイナー)等を使用することで可能になるかと思いますが、検証してはいません。

Q: 蛍光のS/N比を上げるためにどんな工夫をされていますか?

A(町田): 蛍光標識された低分子化合物で標識することが可能なHaloTagを用いています。抗体の性能にも依ると考えられますが、一般的に蛍光標識抗体の場合よりも高いS/N比を得ることができると考えています。Webinarでご紹介した例のように、酵素活性を用いて蛍光標識する方法も有効と考えます。

Q: ゴミは、何に由来するか分かりますか?

A(町田・オンチップ): いろいろなものが考えられるかと思います。例えば壊れたGMD、死細胞のデブリ、微小な繊維状のプラスチック片などがあります。

Q: 増殖の良い大腸菌、酵母等では、マイクロコロニーが大きくなり、GMDが破壊されやすく、偽陽性が出やすいのでしょうか。

A(町田): 生育温度や時間等を制御することで、GMDの破壊を抑制することができます。生育と分泌生産量の兼ね合いで、温度と時間を至適化しています。誘導性プロモーターを用いることで、的とな生育状態で誘導して分泌タンパク質を生産する方法もあります。GMDが破壊された場合、様々な大きさの粒子が増えることにより、擬陽性が出やすくなる可能性があります。

Q: SPiS利用の際は、分注後GMDを溶かしますか?

A(オンチップ): マイクロコロニーのまま分注するにはGMDを分注した方が良いかと思われます。

Q: 酵母スクリーニングに用いたGMD作成のゲル素材は何ですか?

A(町田): ビオチン化された低融点アガロースです。

Q: GMDをプレートに播種し培養してできたコロニーは、1 GMD由来になっていますか?

A(町田): GMDの濃度を調整することで、1 GMD由来とすることができます。

Q: On Chip のソーターは最大でどの位の大きさのソーティングが可能なのでしょうか?

A(オンチップ): 今回の町田先生の実験で用いた交換型マイクロ流路チップ(流路幅80 μm)ですと直径60 μm程度のGMDまでソーティング可能です。また、流路幅150 μmの流路チップを用いますと、直径100~120 μmのGMDがソーティング可能になります。

Q: 各GMD毎の細胞数のばらつきと蛍光強度の補正はどの様に行いますか?

A(オンチップ・町田): 確率的に1細胞がGMDに包埋されるよう酵母懸濁液を希釈しているため、9割程度のGMDは細胞を含まない空のGMD、残り約1割が1細胞のみを含むもの、そしてごく稀に2個以上の細胞を含むGMDとなるよう調整しています。蛍光強度については微量のGMDサンプルをまずOn-chip Sortで流し、適切な蛍光強度となるようゲイン(シグナル増幅率)を調整しています。

Q: GMDはオイル層からどうやってきれいに回収するのでしょうか?

A(オンチップ): 1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノール という試薬を用いることで、フッ素界面活性剤を不安定化させ、エマルションを融合させることでオイルと分離することが可能です。

Q: ゲル化剤の中で、アガロースゲルを使用されているなぜですか?

A(町田): 生物活性が低い(生育阻害などを起こしにくい)ことが主な理由ですが、普段から扱いに慣れていることも理由になっていると思います。

Q: 生産性が1.5倍程度のシグナル強度差でもソーティング可能でしょうか?

A(オンチップ): 必要に応じゲイン(シグナル増幅率)等を調整することで可能だと考えられます。

Q: GMDから酵母が出ることはないのでしょうか

A(オンチップ・町田): あります。そのため、ゲル化条件や培養時間を工夫することで、GMD内でのマイクロコロニーの生育などを調整しています。Freeの酵母細胞を完全に無くすことは困難ですが、ソート条件の調整によってほとんど問題にならないレベルに抑えることができています。

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